空と回転
PONKOTSU-BARON project 第2弾 『回転する夜』
を観劇してきた。
海沿いの田舎町に住む引きこもりの青年と兄夫婦、幼馴染たちの話。
後悔している出来事を夢の中で何度も何度も回転し、繰り返して、真実を知る。
話の中で明らかになること以外にもかなり考えられて作られている脚本で、あの時の行動、些細な仕草、言葉の意味は……といくらでも深く考えられるような舞台だった。
私が大学で陶芸コースに所属していた頃のとある先生は、以前は髪をロングヘアーにしていたという。轆轤を回していたら土に髪の毛がくっついてしまって巻き込まれ、そのまま顔面が土にめり込み、呼吸が出来ず死にそうになったのだそうだ。
回転するものには、巻き込まれないよう充分注意しないといけない。
そこには大きなエネルギーがあるのだから。
海沿いの田舎町で、引きこもりの話というと私はどうしてもKNOTS氏の漫画や楽曲が思い出されてしまう。
KNOTS氏は自身も山口県の海沿いにある田舎町に住んでいた人で、『田舎の大学生』『海沿い』など、田舎や海をテーマとした楽曲を多く生み出している。
舞台『回転する夜』は流れる空気の重たさと、最後に真実を知って以降の爽やかさの対比が美しい作品だった。
その重い空気感と爽やかな後味はKNOTS氏の漫画『あたらしいとし』を思い起こさせた。
氏の作品では『ソラミちゃんの唄』という、田舎の引きこもり浪人生の漫画があるが、こちらは設定・エピソード的な重さはあるものの、常に仲間、友人がいて、年齢的にも若く爽やかさが強い。
この漫画のテーマ曲である『スカイゲイザーズ』を聴いても、その爽やかさがそのまま表現されている。
誰もが悩んで、傷を抱えて、それでも生きている。
後悔して回転するか、言えないことを空に歌うか。
立ち止まる時、どちらを選ぶのもきっと正しい。
そしてどちらもそこには大きなエネルギーが発生している。
自分の心に絆創膏を貼るための作品を作るのも、それを人に見せることも難しくて恥ずかしいけれど、少しでも前に進むためにはきっと必要だ。
恥ずかしがらず、拗ねず、諦めず、表現を続けよう。
スカイゲイザーズ/KNOTS