鰯の頭への祈り
鰯の頭のようなものなら世界にはありふれている。
その気になればきっとどんなものにだって信心を持つことができるのだろう。
神と呼べばそれは神になり、天使と思えばそれは天使なのだ。
誰かの神を踏むようなことはしたくないが、どれが神なのか見分けることはできない。
なるべくものを踏まないようにそろそろと歩くしかない。
私の愛する鰯の頭たちよ、今日も私は信じているよ。
そんなことは知ったことじゃないだろうけれど、確かにそれで良いのです。
何も報われることも救われることも期待していないのです。
ただこの世界に在ってくれれば、勝手に何かを感じ取ってお告げにするので。
もしもなにか望むことが許されるのならば、
ほんの少しでいいから、自分をこの世界の中で特別な存在だと思っていてほしい。
信仰に値するような存在だと、ほんの少しだけ自覚していてほしい、なんて。
贅沢なお願いを空中に祈ってみる。
勝手にその者の中に神の名をみる人間のどうしようもない祈り。
神の名前に堕ちる者/kaoling